「生命=化学反応?」で、「イエス!」、なら、
究極に効率のいい化学反応をもつ、ただ1種類の生命がこの地球上にいるっていう風に…、
はいはい、なんでならないんですかね?と。
…なんでならないんですかね?どうしてひとつに収束しないんですか?
なんで“スーパーヒューマン”ができないのか?とか、
なんにでも感染できる“スーパー口蹄疫”ができないの?とかね。
人間にも鳥にも、なんにでも感染できるようになってもいいよね。
そのほうが彼らはふえる…ふえるのが目的ならばさ。ふえることができる。
いくつか答え方がありますが…。
バクテリアを1つの環境で、培養します。突然変異をおこさせながら、どんどん培養します。
すると、一番いいものがふえてきて、生き残っていきますよね。
さっきの話ならば、最後に残ったのは、すっごい強いはずなんだよね。
でも、起こったことは…
ある生物がいて、そこに変異をおこさせて、何種類かが生き残って、
また変異をおこさせて、また何種類か生き残って…っていう実験を
何回もやっていきますよね。
で、研究室でやったので、途中で滅んだのを持っているんですよ。
途中で滅んだやつをとっておいて、それと最後のやつを混ぜるじゃない?
昔のひとと今のひとを混ぜるみたいに。
今のひとのほうが進化しているならば、
今のひとが勝って、昔のひとは負けるはずだよな。
でも、そうはならずに共存しちゃうんですよ。どんな割合で混ぜても。
ある一定の、10%昔のひとがいつも残る、とういうようなことがおこる。<図2>
さてさて…、「なんでですかね?」と。
つまり、「1つの環境でどんどん進化しても、“スーパー○○”にならない。」と、
実験結果は言っている。
「なんでですか?」…というのは結局ですね…、
いまこれ、ある特定の遺伝子に変異をかけながら競争させているんだけど、
遺伝子から産物ができますよね、ある栄養をつくりだすんですけど。
栄養をつくりだせるAは、早く、どんどんふえることができる。<図3>
だけど、AもBも油の膜でできていて、栄養が漏れてきちゃうんだよね。
するとさ、Bはそれ食べて生きていける…よね。<図4>
ということは、1種類の生物だけが存在する状態には、ならないですよね。
…するとさ、
「栄養を漏らさない、完璧な膜ができればいいじゃない?」って思いますよね。
でも、今のところ、材料が油の膜とか、やわらかいものなので、
それはなかなか実現されていない、というのが答えの1つですね。
…もう少しあとでぼくの考えを言いますけど。
だけど、生物が完全に、機械のように、完璧にに利己的にできるか?っていうと…、
つまり、
『絶対に栄養をもらさない!』とか、『絶対に情報をもらさない!』、とか、できるかな?と。
たとえば、いい例じゃないけど…、
試験のときとか、「絶対ひとに答え教えへん!」って思ったって、
隣がぎゅーぎゅーづめに座ってたりすると、情報もれたりするよな?
そしたら、いっぱい生き残りでてくるよね(笑)。
そうですね(笑)。
でも、仮に1つの机に1人、とかなら、完全に利己的にできるよね。
実際にこの件も、薄い条件のとき…、
つまり、菌と菌が接触しない、とか、栄養を漏らしたのがわからないぐらい薄い条件にすると、
1種類の菌が生き残っちゃうんですよ。
世の中どうなってるかというと、
もちろん、集団や生物の数がすっごい少ない初期のころは、生きるか死ぬかしかないから、
あなたの言うように、早くふえるものが生き残ってくる。
だけど、だんだん混んできたら、餌や情報なんかが、いろいろ漏れてくる。
すると、それを食べることができたり、ということがおこるから、共存しちゃう、っていうのが考えのひとつです。
もうひとつはね…
遺伝子が決まっていて、環境が決まっていたら…、
つまり、設計図と環境が決まっていたら、たとえば機械なら完璧同じものになるはずだよね。
時計を同じ設計図でつくったら、ほとんど正確になるじゃん。
なんだけど、細胞レベルでは、少なくとも。そうはならない。
ある生物の、ある遺伝子の発現に関して、
1匹1匹を調べてみると、発現のしかたは、ふらっふらしてるんですよ(笑)。
みんな同じ遺伝子を持っていて、同じ環境にいるんだけど、ふらふらしている。
完璧な機械じゃないんですよね。まず。生きものは、いい加減なんですよ。
大腸菌なら4千個、人間なら2万個の遺伝子が、それぞれいい加減に動いているんです。
…で、「ふらふらしてるのにも、意味はあるかいな?」と思って。
同じ遺伝子をつかって、
たまたまふらふらして、あるマイナーな発現のしかたをしたものだけが、
よくふえられるような環境にしたわけ。
すると、その生物は、マイナーな発現のしかたをするようになるんです。
そうすれば、ばあっとふえられるよね、生き残れるよね。
つまり、あたりまえだけど、
普通は、『物がきたら見る。』、というように、センサーがあって、
「センサーが感知したから、ああしてこうして、こう変えよう。」ってなってんだけど、
そんなんしてたら、すべての化学物質にセンサーついとかなアカンよね。そんなの大変。
生物はそんなんしてなくて、最初から適当に、ふらふら動いている。
おなじ遺伝子で、おなじ環境だったら、遺伝子がどんどん変わって進化していくんだから、
すごいその環境にむかってチューン(適応)しているなら、
遺伝子の発現は、ビシッとして、何もふらふらしたりしないはずだよね。
いちばんいい状態になってるはずだ、と。
…なんだけど、まず、そうはなっていない。
「なんでそうなっているか?」というと、
たまたまふらふらして
…というのは、遺伝子が変わってなくて、ただ制御が甘いだけなんだけど…、
いい加減にふらふらしている、ということがアドバンテージになるから、だよね。
人間が機械をチューニングするときは、ある環境にビシッと、効率よく動くようにつくるでしょ。
それがアドバンテージだと思ってますよね?…でも、そうではなくて。
「わけわかんない環境でも動くようにつくりなさい。」と言われたら、
そもそも、完全にどっかにチューニングしちゃうと、マズイですよね。
【第3回へ続きます。】
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