2010年8月5日木曜日

許先生のインタビュー壱

  中国経済が世界に与える影響

~世界経済が金融危機に見舞われる中で中国経済だけが先陣を切って景気回復に向かっている。中国経済はこのまま成長を続け、世界経済回復のエンジンとなるだろうか。

 

  インタビュー相手

許衛東准教授 (経済学研究科 経済学系専攻)

・プロフィール ・・・学歴 東京大学理学研究科地理学専攻 博士単位取得満期退学

           研究内容 中国経済

  研究キーワード・・・経済地理学 アジア経済 中国経済

 

  質問項目

A.〓先ずは許先生について聞く〓

 1.日本の大学で学ぼうと思った理由

 2.許先生が研究なさっている経済地理学とは

 

B.〓中国経済の事情とそれが世界に与える影響ついて聞く〓

 1.中国経済が経済成長を遂げた理由とは 

 2.中国経済の成長はこのまま持続するのか 

 3.中国の経済躍進は世界にどのような影響を及ぼすのか、また、世界経済回復のエンジンとなるのか

 

C.〓その他気になっていたことについて聞く〓

 1.中国国内の経済格差が縮まらない理由とは

 

初めてのインタビューであったし、初対面の方と一時間以上の対談するっていうのも初めてっ。なるべく失礼のないようにっ!と思えば思うほどますます緊張していったので、先生の部屋のドアを開ける前はかなりドキドキ・・・。でもせっかくの貴重な体験なのだから楽しんでやろうと思ってドアを開けた!

 

 

 

それでは、さっそく許先生にインタビューしてみよう!

 

(以下は、許先生のインタビューを、自分なりに解釈しまとめたものである。)

 

 

  A.1.日本の大学で学ぼうと思った理由

 

    まずは、中国の大学に入った(1980年)が、ここで、国が計画経済を変えようと、そのための若手の人材育成のために、在学の大学生を募集し、各先進国の大学に留学させて、先進国の高い技術を吸収しようという試みが行われた。そこで、許先生はたまたま日本の大学を選んだ。

   学部は筑波大学で勉強し、その後Master課程は、東京学芸大学にて農業地理学の分野の熱帯農業を研究。博士課程は、東京大学で農業だけでなく産業全般など視野を広げて研究した。

 

  A.2.許先生が研究なさっている経済地理学とは

「地理学」は、土地・地表に関する学問。その前に「経済」が付いたのが経済地理学である。「なぜA工業港湾地区にあるのか」「なぜB農業が内陸の高原地帯で行われているのか」など、経済事象の場所・位置・地理的な側面にこだわるのが経済地理学である。

   したがって、経済地理学とは、資源や生産・流通・消費など経済的事象の地上における分布・立地・展開を研究課題とする学問である。経済事象の地表における展開の中に、いかなる規則性・法則性があるのかを研究する学問なのだ。

   去年のノーベル経済学賞の受賞者はアメリカ人の経済地理学者。世の中の経済の現象を説明する有効なひとつの手段として経済地理学は重視されている。今では、グローバリゼーションにより、世界のボーダレス化が進み、企業は世界各地に進出するようになり。そうなると、空間の意味が問われるようになり、より経済地理学が注目を集めた。

 

 

  B.1.中国経済が経済成長を遂げた理由とは

 

   中国は社会主義の看板を下ろしていない、共産党の一党独裁政治である。しかし、市場経済を導入している。

   中国は経済の成長のために、地域(たとえば沿岸部)に権限を与えて、地域間の競争心をひっぱりだした。外国の資本、企業を招いたり、外国と積極的に貿易をすることを許可した。ここでは、経済的に実績をしっかりと残すことを条件にしていたが、これらの地域には、経済における良性循環ができ、中国経済成長のひとつの要因となった。

 

 

  B.2.中国経済の成長はこのまま持続するのか

 

 中国の経済は、一般に以下の正反対の見方が挙げられる。

 1.中国脅威論・・・中国はSuperPower(経済で世界を動かしたり、影響を与えるような力)を持った国であり、今後も経済成長をし続けるだろう。

 

 2.中国崩壊論・・・中国は政治体制がまだ整っていないし、近代化も完成していない。また西洋的な価値観を共有できる社会にもなっていない。つまり成熟した社会が確立されていないために、中国経済はじきに崩壊する。

 

   しかし、許先生はこのどちらの考えも間違っているという。

 

   中国の経済成長率は89パーセント、日本は12パーセントであり、客観的に数値だけを見れば日本と比べても激しい成長を続けているように思える。だが、日本・アメリカ・EUなどの経済大国と中国とでは、経済成長が意味する状況が違うということを認識していなければならない。

経済大国である日本やアメリカ・EUはすでに高度経済成長を遂げ、国民は働くことを希望すれば、だいたい雇用されるような雇用先が存在する。つまり、完全雇用社会が成り立っているのだ。一方、中国は高度経済成長をまだ迎えておらず、雇用先が全然足りていない状態なのである。

   中国の経済成長率の89パーセントという数値は、日本の12パーセントという数値とは意味が異なる。中国では、1パーセントにつき約120万人近くの雇用が生まれるというが、89パーセントでは約1000万人程度で、この高い経済成長率でもまだまだ、足りないのだ。つまり中国は国家として運営し続けるためには、この程度が普通、いやこれ以上の経済成長率が必要であるということを認識しておくべきだ。

 

   たしかに中国脅威論で言われているように、外から見れば急激な成長をし続けるように見えるが、中国自身の内側から見ればたいしたものではないということである。

 

   また、成熟した社会が確立されていないとはいえ、中国崩壊論で言われるような経済の崩壊を招く程でもないようだ。

 

 

 

 

 

B.3.中国の経済躍進は世界にどのような影響を及ぼすのか、また、世界経済回復のエンジンとなるのか

 

   B.2でも見たとおり、今の中国の経済成長率は自国の運営をしていくには当然のものであるため、現在の経済大国である日本やアメリカ・EUの経済に影響を与える程の力はない。またアメリカのコカ・コーラやマクドナルドといった世界をまたにかける顔企業が中国にはないのも、その経済大国に影響を与える程の力はない理由にあたる。

   中国はあくまでもMidlePower(地域大国)であるということだ。

 

アメリカなどの各先進国を考えれば、SuperPowerになるためには、

    ・民主主義であること

    ・多元的社会であること

が必要条件であり、一党独裁の社会主義である中国ではまだまだ経済で世界を動かしたり、影響を与えるような力SuperPowerになることはできないようだ。

 

 

 

 

 

 

0 件のコメント:

コメントを投稿